ここでは萌えCanちぇんじ!を題材にした小説、またはssを上げていきます。よかったら読んでいってください!感想お待ちしております
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遅ればせながら、掌編をひとつ。
現在のところ、私が『風媒花』唯一の女性マスターのようなので、ちょっと毛色が違うかも知れません。
少しでも、お楽しみ頂ければ幸いです。
現在のところ、私が『風媒花』唯一の女性マスターのようなので、ちょっと毛色が違うかも知れません。
少しでも、お楽しみ頂ければ幸いです。
【我が家の日常風景】
一人暮らしが、まったく楽しくなかったと言ったら嘘になる。
学生の本分であるところの勉強も、遊びも、ついでに家事も。独りのほうが気楽で、だからこそ出来ることも少なくない。時間と体力とお金が許す限り、めいっぱい楽しんで暮らしていた、つもりだった。
なのに、そうして過ごせば過ごすほど、自分の中で何かが外れて狂っていった。
賑やかな『外』から戻って、玄関のドアを閉じるそのたび、何かが胸から欠けては落ちる。慣れたはずの静寂が、底知れない孤独に変わる。
ここが本当に自分の居場所なのだと、証明する何かが欲しかった。
『おかえり』、と。
誰かが、そう言ってくれるだけで良かった。そんな他愛もないはずのコミュニケーションからさえ、気付けば長く遠ざかってしまっていた。
つまるところ、飢えていたのだろう。応えてくれる声、誰か自分以外の存在に。
――アンドロイドの主人になって、その子を育ててみないか。
そんな、ある種突拍子もない勧誘に、飛びついてしまうほどに。
***
けたたましいメロディに合わせて、虹色の光が明滅する。
その原因、もとい目覚まし時計の方向に手を伸ばし、重力に任せて手のひらを落とす。
がんっ、と低い音を最後に、静寂。そのまま指先で探って、スヌーズのスイッチも切ってしまう。
じわりと痛む手のひらと、触れる金属の冷たさに、どうにか意識を浮上させる。
部屋はまだ暗いとはいえ、朝だ。起きなければ。
あの子たちを、起こさなければ。
本当はまだ、実のところものすごく眠い。けれどそれでも、
(はやく、会いたい、し)
どうにかこうにか起き上がり、眠さに負けてふらつきながらも、隣の部屋にたどり着く。
そっと扉を開けて、中を覗いて――ほっ、と、知らず溜息がこぼれた。
ふたつ並べて置かれたベッドに、少女が二人、寄り添うように眠っている。
ひとりは、波打つプラチナブロンドを散らして、豪快な姿勢で。もうひとりは、まっすぐな黒髪をゆるくまとめ、ちんまりと行儀良く。
寝相まで見事に好対照な、二人の『愛娘』。
「ネージュ、キルシェ」
そっとそれぞれの頭を撫でると、自然と唇がほころんだ。
こう言える相手がいる。その喜びは、きっと何にも代えられない。
「おはよう、二人とも。朝だよー」
ぱちりと目を開けたのは、黒髪――キルシェの方が先だった。
寝ぼけた様子もなく焦点を結んだ瞳が、ふわりとやわらかな笑みを浮かべる。
「おはようございます。すぐに朝ごはん、準備しますね」
「うん、お願いー」
この不思議な同居生活が始まって以来、どうにか目覚まし時計で起きられるようにはなった。けれど元来が宵っ張りの身体は、目覚めてすぐには、なかなかまともに動かない。
寝ぼけてトースターで火傷したところを目撃されて以来、朝食作りはもっぱらキルシェ任せになってしまった。
さらに最近の彼女は、薬学の勉強にもはまりつつあるらしい。
確かに先日、エプロンドレス風の作りが可愛いナース服を買い与えはした。けれど、まさかそれが原因ではないだろう。
理由を訊いて返った答えは、
「大事な家族の皆さんのために、出来ることを増やそうと思いまして」
そう、薬学書を片手ににっこり笑う彼女が天使に見えた。
思わず力一杯抱きしめた途端真っ赤になった顔も可愛くて愛しくて、本当に泣きそうになった。
一体どうしてこんな良い子が、うちなんかに来てくれた――いや、うちなんかで、育ってくれたんだろう。
「……反面教師、かなぁ」
無意識に呟きつつ、目線を落とす。
片割れが起き出した分冷たい空気でも入ったのか、ますます頑固にブランケットにしがみつきながら、銀色の頭が小さく震える。手首から先だけが外に出て、目にかかっていた髪を払いのける。
そうしてようやく、まだ眠たげながらも開いた双眸が、ゆるりとこちらを振り仰いだ。
寝起き故か濃く見える瞳は、ガーネットもかくやと言う深い紅。
赤目の子は他にも沢山いるけれど、きっとこの瞳にはかなわない。
「おはよ、ネージュ。キルシェはもう起きたよ?」
そう告げてみても、リアクションは芳しくない。
まだぼんやりした眼差しに、内心こっそり苦笑する。こういうところは、育て主に似てしまったのだろうか。
とは言え、きっと程なく朝食が出来上がる。せっかく三人家族なのだから、食事くらいは揃って食べたい。
こうなったら、実力行使あるのみか。
「ほら、もうすぐごは、っわあ!?」
引っ張り起こそうと伸ばした腕を逆に掴まれ、引き寄せられた。
不意打ちにたまらず倒れ込んだ身体が、そのまま抱き枕よろしく腕の中に閉じこめられる。
くすりと、かすかな笑みを含んだ吐息が、耳に触れた。
「もう少し寝る……。お前も、まだ眠いだろ?」
だから、と囁くハスキーなアルトに、心拍数が跳ね上がった。
(だっ、だめだだめだ流されちゃ駄目だ、どうせ寝ぼけてるだけってか冗談、いやそれ以前にこの子は娘みたいなもので……っ!?)
あああもう本当に、一体何がどうして、こんな子に育っちゃったんだろう!
声もなく震える親もどきを見て満足したのか、一転、明るい笑い声が弾けた。
「すっげ、首まで真っ赤……っ! お前、いい加減慣れねえ?」
「な、っ、慣れるかばかぁあっ!?」
口調も性格も男性的なのに――あるいは、だからこそ、なのか――、ふとした仕種や表情が、ひどく艶めかしく映る。半分以上はわざとだろうが、恐らく残りは無意識だ。ギャップ萌えもここまできたら罪だと心底思う。
銀の髪に朝陽を映し、真紅の瞳を煌めかせて、愛すべき娘がにやりと笑う。一瞬見惚れてしまったのは、仕方のないことだと思う。
彼女がここに来た日から、欠けたものが少しずつ戻ってきた。
今の自分は、彼女の存在なしにはあり得ない。
「改めて、おはよう。今日も頑張ろうな」
起き上がりざま、ぽふ、と軽く叩くように頭を撫でていく手のひらは、乱暴なようで実は優しい。
朝ごはんの準備が出来ましたよーと、キッチンからキルシェが呼ぶ声がする。
「おー、今行くー!」
応えたネージュが振り返り、楽しげに小首を傾げてみせる。行こう、と促す仕種に、頷きを返した。
「冷める前に行かないと、キルシェ怒るもんね」
普段は大人しやかな二番目の娘は、実は怒ると誰より怖い。
それは嫌だと肩を竦めて目を見交わして、けれどお互い足取りは軽い。
「そーいや、昨日ケーキもらって帰ってきたんだった。どーせだし今食っちまうか?」
「あぁ、ウェイトレスのバイトだったんだっけ。わぁい楽しみー!」
「んー、でも2つしかなかった気もすんなー」
そんなことを如何にも意地悪げに言ってきたが、その手には乗らない。
「そしたら、半分こしてくれるんでしょ?」
だってネージュは優しいもん、ね?
にっこり笑顔でそう返せば、ふいと目が逸らされた。髪の間に覗く頬には、わずかに朱が散っている。
このひねくれ者の悪戯娘は、真正面からの賛辞にひどく弱い。
形勢逆転、今度はこちらが観察を楽しんでいると、視線に気付いたのだろう、だんだん顔が俯いて、耳にまで赤味が広がっていく。
これはそろそろフォローを入れるべきかと思いかけた時、
「レアチーズケーキ」
「へ?」
表情は髪に隠したまま、ぼそりと声だけが落ちてきた。
「ちゃんと3人分、もらって来た、から。安心しろ」
どこかぶっきらぼうな口調は、彼女なりの照れ隠しだ。
判ってたよと言う代わりに、うん、と頷く。
「じゃ、みんなで食べようね」
「……ああ」
ようやく上げられた顔には、何の皮肉も含みもない、ただ素直な笑みが浮かんでいた。
キルシェが作った朝食の後、ネージュが選んだケーキを、お気に入りの銘柄のコーヒーと一緒に。
そんな我が家の日常風景には、他の何でもなく、穏やかな幸せが満ちている。
-fin.-
*-----*-----*-----*
※初出:mixi
(一部設定を変更・修正)
一人暮らしが、まったく楽しくなかったと言ったら嘘になる。
学生の本分であるところの勉強も、遊びも、ついでに家事も。独りのほうが気楽で、だからこそ出来ることも少なくない。時間と体力とお金が許す限り、めいっぱい楽しんで暮らしていた、つもりだった。
なのに、そうして過ごせば過ごすほど、自分の中で何かが外れて狂っていった。
賑やかな『外』から戻って、玄関のドアを閉じるそのたび、何かが胸から欠けては落ちる。慣れたはずの静寂が、底知れない孤独に変わる。
ここが本当に自分の居場所なのだと、証明する何かが欲しかった。
『おかえり』、と。
誰かが、そう言ってくれるだけで良かった。そんな他愛もないはずのコミュニケーションからさえ、気付けば長く遠ざかってしまっていた。
つまるところ、飢えていたのだろう。応えてくれる声、誰か自分以外の存在に。
――アンドロイドの主人になって、その子を育ててみないか。
そんな、ある種突拍子もない勧誘に、飛びついてしまうほどに。
***
けたたましいメロディに合わせて、虹色の光が明滅する。
その原因、もとい目覚まし時計の方向に手を伸ばし、重力に任せて手のひらを落とす。
がんっ、と低い音を最後に、静寂。そのまま指先で探って、スヌーズのスイッチも切ってしまう。
じわりと痛む手のひらと、触れる金属の冷たさに、どうにか意識を浮上させる。
部屋はまだ暗いとはいえ、朝だ。起きなければ。
あの子たちを、起こさなければ。
本当はまだ、実のところものすごく眠い。けれどそれでも、
(はやく、会いたい、し)
どうにかこうにか起き上がり、眠さに負けてふらつきながらも、隣の部屋にたどり着く。
そっと扉を開けて、中を覗いて――ほっ、と、知らず溜息がこぼれた。
ふたつ並べて置かれたベッドに、少女が二人、寄り添うように眠っている。
ひとりは、波打つプラチナブロンドを散らして、豪快な姿勢で。もうひとりは、まっすぐな黒髪をゆるくまとめ、ちんまりと行儀良く。
寝相まで見事に好対照な、二人の『愛娘』。
「ネージュ、キルシェ」
そっとそれぞれの頭を撫でると、自然と唇がほころんだ。
こう言える相手がいる。その喜びは、きっと何にも代えられない。
「おはよう、二人とも。朝だよー」
ぱちりと目を開けたのは、黒髪――キルシェの方が先だった。
寝ぼけた様子もなく焦点を結んだ瞳が、ふわりとやわらかな笑みを浮かべる。
「おはようございます。すぐに朝ごはん、準備しますね」
「うん、お願いー」
この不思議な同居生活が始まって以来、どうにか目覚まし時計で起きられるようにはなった。けれど元来が宵っ張りの身体は、目覚めてすぐには、なかなかまともに動かない。
寝ぼけてトースターで火傷したところを目撃されて以来、朝食作りはもっぱらキルシェ任せになってしまった。
さらに最近の彼女は、薬学の勉強にもはまりつつあるらしい。
確かに先日、エプロンドレス風の作りが可愛いナース服を買い与えはした。けれど、まさかそれが原因ではないだろう。
理由を訊いて返った答えは、
「大事な家族の皆さんのために、出来ることを増やそうと思いまして」
そう、薬学書を片手ににっこり笑う彼女が天使に見えた。
思わず力一杯抱きしめた途端真っ赤になった顔も可愛くて愛しくて、本当に泣きそうになった。
一体どうしてこんな良い子が、うちなんかに来てくれた――いや、うちなんかで、育ってくれたんだろう。
「……反面教師、かなぁ」
無意識に呟きつつ、目線を落とす。
片割れが起き出した分冷たい空気でも入ったのか、ますます頑固にブランケットにしがみつきながら、銀色の頭が小さく震える。手首から先だけが外に出て、目にかかっていた髪を払いのける。
そうしてようやく、まだ眠たげながらも開いた双眸が、ゆるりとこちらを振り仰いだ。
寝起き故か濃く見える瞳は、ガーネットもかくやと言う深い紅。
赤目の子は他にも沢山いるけれど、きっとこの瞳にはかなわない。
「おはよ、ネージュ。キルシェはもう起きたよ?」
そう告げてみても、リアクションは芳しくない。
まだぼんやりした眼差しに、内心こっそり苦笑する。こういうところは、育て主に似てしまったのだろうか。
とは言え、きっと程なく朝食が出来上がる。せっかく三人家族なのだから、食事くらいは揃って食べたい。
こうなったら、実力行使あるのみか。
「ほら、もうすぐごは、っわあ!?」
引っ張り起こそうと伸ばした腕を逆に掴まれ、引き寄せられた。
不意打ちにたまらず倒れ込んだ身体が、そのまま抱き枕よろしく腕の中に閉じこめられる。
くすりと、かすかな笑みを含んだ吐息が、耳に触れた。
「もう少し寝る……。お前も、まだ眠いだろ?」
だから、と囁くハスキーなアルトに、心拍数が跳ね上がった。
(だっ、だめだだめだ流されちゃ駄目だ、どうせ寝ぼけてるだけってか冗談、いやそれ以前にこの子は娘みたいなもので……っ!?)
あああもう本当に、一体何がどうして、こんな子に育っちゃったんだろう!
声もなく震える親もどきを見て満足したのか、一転、明るい笑い声が弾けた。
「すっげ、首まで真っ赤……っ! お前、いい加減慣れねえ?」
「な、っ、慣れるかばかぁあっ!?」
口調も性格も男性的なのに――あるいは、だからこそ、なのか――、ふとした仕種や表情が、ひどく艶めかしく映る。半分以上はわざとだろうが、恐らく残りは無意識だ。ギャップ萌えもここまできたら罪だと心底思う。
銀の髪に朝陽を映し、真紅の瞳を煌めかせて、愛すべき娘がにやりと笑う。一瞬見惚れてしまったのは、仕方のないことだと思う。
彼女がここに来た日から、欠けたものが少しずつ戻ってきた。
今の自分は、彼女の存在なしにはあり得ない。
「改めて、おはよう。今日も頑張ろうな」
起き上がりざま、ぽふ、と軽く叩くように頭を撫でていく手のひらは、乱暴なようで実は優しい。
朝ごはんの準備が出来ましたよーと、キッチンからキルシェが呼ぶ声がする。
「おー、今行くー!」
応えたネージュが振り返り、楽しげに小首を傾げてみせる。行こう、と促す仕種に、頷きを返した。
「冷める前に行かないと、キルシェ怒るもんね」
普段は大人しやかな二番目の娘は、実は怒ると誰より怖い。
それは嫌だと肩を竦めて目を見交わして、けれどお互い足取りは軽い。
「そーいや、昨日ケーキもらって帰ってきたんだった。どーせだし今食っちまうか?」
「あぁ、ウェイトレスのバイトだったんだっけ。わぁい楽しみー!」
「んー、でも2つしかなかった気もすんなー」
そんなことを如何にも意地悪げに言ってきたが、その手には乗らない。
「そしたら、半分こしてくれるんでしょ?」
だってネージュは優しいもん、ね?
にっこり笑顔でそう返せば、ふいと目が逸らされた。髪の間に覗く頬には、わずかに朱が散っている。
このひねくれ者の悪戯娘は、真正面からの賛辞にひどく弱い。
形勢逆転、今度はこちらが観察を楽しんでいると、視線に気付いたのだろう、だんだん顔が俯いて、耳にまで赤味が広がっていく。
これはそろそろフォローを入れるべきかと思いかけた時、
「レアチーズケーキ」
「へ?」
表情は髪に隠したまま、ぼそりと声だけが落ちてきた。
「ちゃんと3人分、もらって来た、から。安心しろ」
どこかぶっきらぼうな口調は、彼女なりの照れ隠しだ。
判ってたよと言う代わりに、うん、と頷く。
「じゃ、みんなで食べようね」
「……ああ」
ようやく上げられた顔には、何の皮肉も含みもない、ただ素直な笑みが浮かんでいた。
キルシェが作った朝食の後、ネージュが選んだケーキを、お気に入りの銘柄のコーヒーと一緒に。
そんな我が家の日常風景には、他の何でもなく、穏やかな幸せが満ちている。
-fin.-
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※初出:mixi
(一部設定を変更・修正)
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